『魔法にかけられて』は2007年にディズニーが制作したディズニー映画。最新作もシンデレラ実写版だし、本当にディズニーはシンデレラちっくなおとぎ話が大好きだなぁと思います。これだけシンデレラ(魔法にかけられてはシンデレラっぽいだけでシンデレラではないけれど)をいじり倒して、まだまだネタ切れを起こさないのも凄い。
『魔法にかけられて』はそんなシンデレラいじり大好きなディズニーが、かなり吹っ切れてヤケクソでも起こしたんじゃないかと思えるくらいギャグコメディな映画になっています。ジャンル的にはラブコメディなんですが、ヒロインの電波っぷり凄すぎてギャグ映画に負けないくらい笑えるので、個人的にはギャグ映画です。主演のエイミー・アダムスは表彰されるべき。
こういったディズニーのお綺麗なラブコメディは男性が見ると退屈する映画が多いですが「魔法にかけられて」は男性でも退屈せず見れる(ツッコミが入れられる)映画です。詳しい批評は続きを読むからどうぞ。
シンデレラっぽいヒロインがニューヨークにふっとばされる話
アニメのキャラが現代に来たらどうなるの? という小学生が考えそうなしょうもないテーマを大真面目にやったのがこの映画。しかもシンデレラのようなきれいなおとぎ話のヒロインをニューヨークにブチ込むという力技をやっているのだから面白いに決まってる。
序盤はアニメーションでヒロインのどう見ても三十路ヒロインのエイミー・アダムス、もといジゼルがニューヨークにふっとばされる経緯を語るのですが、現代に舞台が移った後のギャップが酷い。
舞踏会のコスプレかな? と思ってしまうようなドレスを着て土砂降りの雨がふるニューヨークで「お城はどこなの~」と走り回るヒロインを、ニューヨークは冷ややかな目で見つめます。
イルミネーションが光る看板によじ登って「お城だわ!」と叫ぶヒロインに話しかけるヒーロー役のロバートは偉い。この時点で「いい人だなぁ」と思えてしまう。
おまけにエイミー・アダム……ジゼルを家に入れてお世話をして、お約束のガールフレンドに誤解されるというコテコテなことまでやって、掴みはバッチリです。そしてヒロインの電波は停滞することなく、歌いながら掃除をしたり脳天気な発言を連発してロバートを困らせたり、ディズニーのギャグセンスがここまで凄いとは驚きです。
もちろんロバートと喧嘩もするのですが、怒った時に「これが怒るという感情なのね!」と言い出したり、お前怒ったことないんかい、と思わず突っ込みたくなる発言を連発するジゼルは見ていて飽きません。
一方で、本来ヒーロー役だったエドワード王子もキャラが強烈すぎて凄いです。ニューヨークでレイピアを振り回すし、アニメキャラだから現実のルールを理解出来ずやりたい放題。イケメンなのに残念すぎる。最後にはロバートにジゼルを持っていかれて、二重で残念なキャラです。
しかしエドワード王子こそ真のイケメンです。
ジゼルがロバートに惹かれていることを知ると、素早く身を引いてロバートと5年も付き合って結婚も考えていたのに捨てられたナンシーを素早く拾い上げて速攻で結婚します。
この変わり身の速さ!
凄い男です、エドワード王子は。ロバートなんて凡人です。真のヒーロー役はエドワード王子です。
ラストのバトルシーンに時間を取られすぎて映画の尺がもう残り少ないから焦ってナンシーを救い上げたのではありません。決して。
結局、これ浮気の物語じゃないか
ヒーロー役のロバートにはナンシーというガールフレンドがいて、5年も付き合っていて結婚も考えている……そこにジゼルが突然やってくる、というどう考えてもドロドロの昼ドラ展開待ったなしの舞台設定ですが、そこはディズニー、ナンシーはイケメン弁護士ロバートに捨てられても気丈に振る舞い、エドワード王子をゲットします。そしてアニメの世界に旅立つというハッピーエンド、見方を変えればホラーな落ちに突入するのです。
この映画最大の被害者はエドワード王子ではなくナンシーでしょうね。
弁護士で理性的な彼氏が電波全開天然お花畑お姫様のジゼルに奪われて、彼女のプライドは粉々です。5年間の付き合いは何だったんだ。
しかし、ジゼルを責める気持ちにはなれないでしょうね。
なんせ天然すぎて悪気が無いなんですから。まだ悪意や奪い取ってやったぜ悔しいだろう? と言われたほうがナンシーも「こんな天然女好きの男いらねえよ!」と叫べるのですが、ロバートとジゼルの悪気ないけど惹かれあっちゃった、という空気にはもう泣くしかありません。
最後の舞踏会のシーンは見ていて胸が痛いです。
ロバートとジゼルの踊り方はもう恋人同士。でも二人には邪魔者(エドワード王子とナンシー)がいるから付き合えないんだよなぁ(チラチラ)という空気を思いっきり醸しだしていて、もう視聴者が耐えられません。ナンシーが映画終盤で自殺未遂をしても何の不思議もありません。それくらいドロドロ。
まあ、ディズニーがそんなドロドロ恋愛劇をやるわけもなく、ナンシーも無事ハッピーエンド?に着陸して、ロバートとジゼルも付き合って、めでたしめでたしになるのです。
見終わって「いやー笑った」「面白かった」と言える映画でしたが、ふと思い返すと、これは略奪愛の映画、浮気の映画じゃねーかと思ってしまうんですね。だってジゼルのやったことってエドワード王子を放置してロバートをナンシーから奪い去るという略奪愛そのものでしたし「悪気はないの、自然に惹かれちゃったの」という姿勢がまた略奪愛の基本形じゃないですか。
ディズニーはきっと「これは純愛物語です」とゴリ押しするんでしょうし、子供も見れるディズニー映画なんだからそこは深く掘り下げちゃダメですよね。
というわけで『魔法にかけられて』の感想でした。
点数は80点。
色んな意味で楽しい映画でした。男性が見ても楽しめるラブコメディ映画だと思います。
ジゼル役のエイミー・アダムスの演技は本当にすごい。
年季が入ってます。ヒロイン若い設定だけどね。現実だから、これの舞台アニメじゃないから!