レミーのおいしいレストランをブルーレイで視聴しました。
2007年公開の映画で、フランスの元一流レストランでネズミのレミーが見習いシェフ、リングイニと奮闘する物語です。
制作は安定安心のピクサー。
スタッフは20ヶ月近くフランスで取材して設定をねった大作だそうです。
さすがピクサー、CGアクションは手慣れており迫力があります。退屈になりがちな序盤も、子供が飽きないように設定されていて、見始めた時は「おぉー」と見入ってしまいました。
しかし、結果として私はこの映画を好きになれませんでした。
辛口感想です。
ネズミがリアル過ぎてダメ
主人公のレミーはネズミです。まぁ言ってしまえばミッキーもネズミじゃん、ということなんですが、レミーはデフォルメがあまりされていないリアルドブネズミです。
ネズミがレストランで調理する、という設定で、普通であれば拒否反応が出る――というところが設定のキモでもあるのですが、やっぱり受け入れるのは難しいです。
不衛生なイメージが強いですし、レミー可愛い! レミーの作った料理食べたい! とはなりません。最後のネズミ一族全員で料理するシーンはコミカルで面白いですが「ネズミが作ってるのか、無理だな笑」という印象は拭えません。
ネズミが料理という設定を受け入れられない時点で、このレミーのおいしいレストランという映画に入り込めず「ふーん」と遠巻きに映画を見る感じになってしまうのが残念です。
そしてネズミが料理=ダメという大多数が拒否反応を出してしまうようなチャレンジングな設定をそのまま突き出してしまったのは良くないと思います。
デフォルメされているミッキーが料理してるならともかく、レミーはリアルすぎる。レミー一族の行動はドブネズミそのものだし、ミッキーみたいに二足歩行で家に普通に住んでる感じじゃないもんね。下水道が寝床やんけ。ゴミあさってるし……。
ネズミとしてのリアル感は凄く出ていたし、ネズミだからこそシェフになることへの葛藤が生まれるんですが、ネズミとシェフがここまで反発するとは、まぁとにかく不衛生、感情移入出来ないところがレミーの最大の難点です。
トイ・ストーリーが受け入れられたのは、子供も大人も「おもちゃが動いてくれたらいいのにな」という願望を誰もかれも奥底に持っていた経験がある(人が多い)から受け入れられたわけで「ネズミがシェフでも全然OKだよ」というのではちょっと許容範囲をオーバーしてる感じ。
リングイニがクズ
レミーと一緒に奮闘するもう一人の主人公としてリングイニというキャラがいるんですが、こいつがクソ。
腕なんて無いくせに、何の努力もせずレミーに操ってもらって一流シェフとして駆け上がっていくんですが、すぐに慢心してレミーのご主人様面して、一人では何も出来ないくせに本当に努力しない。深夜の掃除すら途中で寝るクソっぷり。
なんでこいつ、こんなにポンコツ設定にしたんだ? と思ってしまうくらいクズでした。もしかして悪役なのか?
ダブル主人公の場合は、レミーとの友情や本人が努力したりする場面をちゃんと描かないと感情移入出来ません。
最初はお互い利用しあってたけど、という形から友人になるのかなーと思っていましたが、こいつは最初から最後までレミーにおんぶにだっこ、最後はウェイターしかやってないし、もうどうしたらリングイニという人間を好きになれるのかわからない。
ピクサー史上最も性格の悪いランキングの上位にランクインしても納得できるクズさ。いや表立ってクズなところが出てるわけではないのですが、さり気ないクズさがまた印象に強く残るんですね。
喧嘩して和解するシーンもあるんですが基本謝らないし、何か薄っぺらい。レミー頼みで全然努力しないし、それで富と名声を手に入れて天狗になって…なんなんだリングイニお前はと言いたくなる。
最後、レミーの正体がバレた時、仲間から見放されても「こいつならしゃーない」と思ってしまった。悪役ならともかくもう一人の主人公がこれじゃだめでしょう。
悪役にはスキナーという金儲け第一主義のシェフがいるんだけど、こいつは言うほど悪役してないし、それだけにリングイニのクズっぷりが目立つ。
最後ドヤ顔でレストランは成功したぜ! みたいな顔してるけどレミーのおかげだから。レミーいなくなったらどうするんだよ、と言いたい。ヒロインのコレットに頼るのか?
コレットは努力で料理の世界で成り上がったのにリングイニというダメ男に落とされた悲劇のヒロインだなぁと毒を吐きたくなるくらいダメ主人公でした。
リングイニはラタトゥイユに顔突っ込んで寝てろ。
ストーリーが結局納得出来ない
そんな設定の穴やリングイニのせいで、全体的なストーリーはまとまってるけど納得出来ないというか、爽快感が無い感じに仕上がっていると感じました。
いや、設定の矛盾とかストーリーの無理やり感は無いですし、最後のネズミ一族と和解して協力してくれるシーンは良い流れだったんですが、もうネズミが料理という拒否反応が出る設定が強すぎた。
そしてそれを払拭するだけの感動的ストーリーを作りきれていなかったところがレミーのおいしいレストランの最大の難点だと思います。
「ネズミが料理」というキツイ設定がなければ、いつものピクサー、それなりに見れるピクサー映画ということで落ち着いたんでしょうけれど、まぁ無理です。
せめてレミーとリングイニの友情がもっとしっかり描かれていたり、リングイニが努力家でひたむきな青年だったら、もう少し感情移入出来たのになぁ、という印象。
最後のシーンで料理評論家のイーゴが「批評家は上から物言えば立場が守られるから楽な家業だ」と言ってるんですが、この映画を辛口批評するなという保守か? と勘ぐってしまうくらいダメダメでした。
きかんしゃトーマスの車版と言われているカーズといい、アメリカと日本の価値観の違いが顕著に出る映画でした。もし「レミーのおいしいレストラン」が日本制作アニメだったらネズミのデフォルメはかなり強かっただろうなと思います。
点数は60点。
全体的に見て「あー、うん、うーん」と首をひねるところもありましたが、序盤のCGアクションと一応最後まで見れるということで、私的にはこの点数。
ピクサー映画ではありませんが、これを見るんだったらシュガー・ラッシュや魔法にかけられての方が完成度が高いです。
ラタトゥイユってなに?
映画で出てきたラタトゥイユ。馴染みのない料理なので調べた所、フランスの定番の田舎料理なんですね。
ラタトゥイユ味のカップラーメン『カップヌードル ラタトゥイユ味』が出ていたので食べてみましたが、普通のトマトラーメンでした。これならシーフード味でいいや。
ラタトゥイユ味のカップラーメン。
なぜこの味を作ったんだろう。
とりあえず、ピクサーの良いところは「とりあえず最後まで見れる」映画を作ることだなぁ。本物のクソ映画だったら最後まで見れませんからね……。
そういう意味でも60点です。
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