IELTSという言葉を聞いたことがありますか?
IELTSとは、海外の大学や移住の際に必須とされている英語判定試験で、留学生や海外就職した人にとってはTOEICよりも馴染み深いテストです。
イギリス、アメリカ、オーストラリアなど英語圏の先進国を含む120カ国、六千の教育機関や国際機関で利用されており、年間140万人が受験する世界でも認められた試験です。
TOEICと異なり、スピーキングとリスニング試験があり、内容は学術的、実践的でかなり難しくなっています。そのため、TOEICよりも本物の英語力がはかれると言われています。
ところが、TOEICで600点~700点レベルと言われているIELTS5.5以上のスコアをとって、履歴書の資格欄に書いても、面接で「このIELTSってなんだい?」と聞かれることが多々あります。
求人を見ても、TOEIC700点以上、もしくは英検二級と書かれており、IELTSのアの字も見当たりません。
日本ではIELTSはあまり知られていない試験であり、外資系企業や英語力を常日頃に使う企業でしか進化を発揮しない資格なのです。
日本で就職するなら、IELTSよりTOEICを受けたほうがいいのか?
なぜIELTSはマイナーなのか?
そこには日本企業のお粗末な事実がありました。
TOEIC600点レベルの英文読み書きだけで仕事は出来る
よく言われているのが、TOEICはスピーキングとリスニングがないため、対策すれば高得点を狙える試験で、TOEIC800点以上でも英会話が完全に出来るわけではない、ということです。
むしろIELTSの方が留学や移民の条件になっているように、本物の英語力を判定してくれます。では、なぜ日本企業はそんなにTOEICにこだわるのでしょうか?
実は、貿易事務、英文経理、翻訳などの仕事では読み書きが重視されます。また外資系企業でもバリバリの海外営業マンでなく事務職であれば、メールのやり取り、海外本社との電話対応など、TOEIC600~700点程度のレベルで十分対応出来る仕事ばかりだからです。
海外との取引が多い商社でも、品質管理など管理系の職務であれば、わざわざ現地に飛んだり英語で電話応対する必要はありません。英文メールで対応するだけで、メールで使う英文は決まりきっていますし、専門用語は入社してから勉強すれば間に合う程度です。
日本企業で使う英語力というのは、実はピンキリなのです。
スピーキングとリスニングが必須の職業は、実際に現地で交渉や買い付けをする海外営業であり、日本企業において英語オンリーの環境に置かれることはほとんどありません。外資系企業の外国人社員も日本語が喋れることが多く、英語でのコミュニケーションを期待しているとガッカリするかもしれません。
また、従業員の資格取得を推奨している企業では、TOEICスコア次第で激励金を出す会社もあります。しかし、そういった企業の多くが企業イメージのために打ち出した形式的なものであり、英語力を身につけても、お金がもらえるだけで全然使わない、といったことが多いです。
カッコつけのグローバル化とお粗末な社内英語
楽天やユニクロといった世界に進出している企業が、日本支社でも社内公用語を英語にしようという試みを行ったことが一時期話題になりました。
入社するにはTOEICの点数が必須になり、社員もまたTOEICの点数が規定以上取れないと昇進出来ない、といった厳しいルールを設け社員の英語力アップをはかりました。
しかし、その実態は日本人同士で下手くそな英語を喋り、会議では「重要な点は日本語で説明します」と注釈をつけて日本語を使うなど、格好だけの社内公用語英語化になっています。
こういった「なんちゃってグローバル企業」では何故かTOEICが重視されます。
TOEICが出来ても英会話が出来るか否かは別問題です。それにもかかわらず、大企業がこぞってTOEICだ! と叫ぶので、中小企業も「英語力=TOEICスコア」という図式にとらわれてしまっているのが日本の現状です。
IELTSは転職において意味がないのか?
上記のように、多くの日本企業は英語の資格に関してはザルです。
しかし、IELTSが転職で役立たないかと言うと、それは違います。
英語に深い知識を持つ人であれば、IELTSは必ず知っています。逆に面接時にIELTSを知らない人が面接官であれば、その企業の英語力は形式的なものである可能性があります。
TOEIC600点以上、と書かれている求人にIELTS5.5スコアで応募して良いのか? 良いのです。
あの文面は皆が求人でTOEICを使っているからTOEICを使っているだけで、求人側の本音は「英語力のある人材がほしい」です。IELTSでも構いません。
日本の求人は規制が多いので、色々と紛らわしいものが多いですが、IELTSは立派な英語力の証明です。
転職においては強い武器になるので、どんどん前に出してアピールしましょう。
特に外資系企業の場合はIELTSもTOEICと同様に評価されますし、むしろスピーキングとライティングが必須のIELTSスコアのほうが実践的だと評価されるケースが多いです。
ただし、IELTS5.5以上でないと、英語力の証明にはならないことが多いので注意しましょう。