かつて八百屋の息子は八百屋を継いだし、電気屋の息子は電気屋のおやじへとなっていった。個人商店が盛んだった時代は、いわゆる「家の事業を継ぐ」という選択肢があった。
しかし、日本の個人商店は企業との競争によって徐々に鳴りを潜め、次第に親がサラリーマン、公務員といった雇われ親世代が増えていった。
現在、大学生の新卒での就職活動はすべて企業への就職という形になっている。大学の就職課はいかに内定を得られるかを学生に説き、学生は何も考えず、流れに従い就職セミナーに出席して、企業説明会に通い内定を得られるよう活動する。
新卒カードという俗語が生まれるほど、日本では新卒での就職を重要視し、既卒後は必然的に厳しい就職活動を強いられることになる。日本では大企業に入ることが安定と言われており、大企業に入るには同じ大企業からの転職か、新卒時に内定を得るしかない。
しかし、新卒で新しい事業をしたい、小規模なビジネスをしたい(例えばフリーライターやネットにお店を作るといった個人事業)という人はどうしたらいいのだろうか?
よく新卒でベンチャービジネスを始める人がビジネス誌などで特集されるが、起業という大きな挑戦とまでいかなくとも、個人事業主、いわゆる自営業という進路は許されないのだろうか?
残念ながら、日本の大学生は新卒で自営業という選択を選びにくい環境にある。その最も大きな理由は下記のとおりだ。
大学生はサラリーマン生活を知らなすぎる
残念ながら、日本の大学生がサラリーマンの生活を知ることは出来ない。インターンシップは一部の作業しかやらせてもらえない学生レベルの体験しか出来ないし、アルバイトはあくまで単純労働だ。サラリーマンの厳しさや金銭的メリット、それぞれの業界の社風など肝心なところが入ってからじゃないと分からない構造になっている。
説明会では企業は自社の良いところしか見せないし、CMや商品のイメージだけで企業を選ぶという滑稽な就職活動をしてしまう大学生もいる。
実際は正規雇用者は責任も重く、通勤電車のきつさ、社内でのお付き合いなどサラリーマン生活のロールモデルが無い。そのため、就職後のギャップに耐え切れず、新卒就職後に早期退職してしまう若者が減らない。
実情を知らないから「自分の就職先はブラック企業ではない」という希望的観測を持ったまま就業してしまう。
新卒自営業は親に反対されやすい
大学生の親もサラリーマンの場合、自営業を始めるとなると完全に1から始めることになる。祖父や祖母は自営業だった場合が多く、親は自営業の厳しさを知っているパターンが多く、自営業をしたいといっても反対されやすい。
また、自営業は職歴にならず、いざサラリーマンに戻ろうとしても難しい。収入的にもサラリーマンの給与と違い、自営業は持ち出しも多く収入が安定しない。様々な面から判断して、やはり新卒はサラリーマンになるべきという意見で説き伏せてくるだろう。